君のいる世界
きっとジミーチュウじゃなくて、ルブタンだったらもっと違っていた。みんなが知っている赤いソールの靴ではなくて、トップブランドの洗練された靴を履きこなしているのを見たら、とても凹んだ。
あたしにはない、礼治さんと過ごした年月がその洗練された美しさを作り出しているのかと思ったら、嫉妬してしまいそうだった。
滲んだ涙をまばたきしてごまかす。
「あなた、礼治に病室で告白してたでしょう? 笑える」
美しいこの人の毒は、耳から入りこんで全身を痺れさせる。寒くもないのに、全身が震えるほどの緊張に包まれる。
「あたしは礼治さんのこと好きなんです。大好きです。礼治さんは、あたしが初めて好きになった人なんです。礼治さんの側で生きていきたいんです。礼治さんの見たものを見て、感じたものを一緒に感じたいんです」
「礼治は誰のことも、好きにならないわ」
「それでもいいんです。礼治さんが喉が渇いてお水が欲しい時に、渡してあげられるだけでもいいんです」
「バカみたい。そんなの、お手伝いさんと変わらないわ」
「……………そうかもしれません」