君のいる世界

「私だって、側にいてもらいたかった。だけど礼治がしたことはストーカーと話すことで、救急車だって人任せだったのよ? 」


 糸がほつれて絡まるように、思いや行為がもつれてこじれてしまっている。


「どんなに愛していたとしても、礼治を見るとストーカーを思い出す。どんなに助けてもらいたくても、私には礼治の背中しか見えなかったわ」


 美しい人は蒼白になった顔で、歪んだ笑みを浮かべた。


 この人も礼治さんの側にいたくて、苦しんでいる。自分の心と体が壊れてしまって、再生させるために礼治さんから離れたんだ。

 その長い年月、礼治さんは何を思って生きてきたんだろう。離婚しないで奥様の生活を影で支えながら、壊れた心の回復を待っていたんだろうか。




 
 お互いが好きで愛しあっていても、こうしてすれ違って離れてしまうことがあるんだ。

 また一粒、涙が転げ落ちた。

 ひとりで生きてきた礼治さんを想って、奥様の苦しみに心を動かされて。
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