君のいる世界
目を見て真っすぐに頷いた。
他の答えなんて、あたしにはなかったから。
「嫉妬してごめんなさい。それでも、あなたが側にいてくれたら礼治はきっと生きていけると思うわ」
クラッチバックから彼女が取り出した紙を広げる。薄いその紙には茶色の印刷で離婚届と書かれていて、名前と捺印がされていた。
「ずっと言えなかった。礼治は私じゃなくてもいいんだって。他に好きな人を作って、他の幸せを見つけてもいいのよって。2人でいたら苦しくなるばかりなのに、ずっと離れることが出来なかったの。これはあなたにあげる。礼治のこと好きでいてくれて、ありがとう」
堪えきれなくて、涙がこぼれてくる。
どれだけの思いで、これだけの言葉をあたしにかけてくれたんだろう。ずっと苦しんできた人の言葉にはとても重みがある。
紙を受け取りながらも、涙がこぼれる。それを微笑んで拭ってくれた彼女は、淡いブルーのタオルハンカチをあたしの手に握らせた。