君のいる世界
「やっぱ無理だわ。たとえヌードだとしても撮る気にもならない」
「そ、そんなっ」
「凄く綺麗にしてるって解るけど、カメラ越しに見える姿はちっとも魅力がないんだよ。誰かの真似だとか、流行りに乗ってればいいとかじゃなくて……たとえばどんなに醜い顔だったとしても、その人の気持ちが前向きで綺麗なものだったら、その人の顔は個性的で素敵なものになるんだよ。あなたからは醜い物しか感じない」
言葉の刃で彼女を傷つけていく。自分の女を傷つけたことが許せなかった。そしてそれに気が付かなかった自分が許せなかった。
こんな女に時間を使うんじゃなかった。からかってイジメて辱めて、ボロボロにして捨ててやりたい。
二度と自分の前に現れないように。
スマホを出すとそれでも何かを期待してこちらを向いた。パシャリと一枚、フラッシュを浴びせると引きつりながらも笑顔を浮かべた。
「今の気にしないで。状況を撮っただけだから。すぐに警察呼ぶから待ってて」
指を滑らせて警察を呼び出す。スマホから110番通報をすると、どこからの着信かわからないと聞いていたので、最寄りの警察を呼び出している。コール三回ですぐにつながる。