君のいる世界
「そうかー結婚する? 」
「出来たらね」
「あたしもこんなに好きになれる人ができるのかな? 」
そこでしょんぼりとうなだれた。
「もし誰も好きな人が出来なかったら、俺のところへおいで」
「いいの? 」
「世界で一番いい男を見つけてあげる」
「うん」
きらきらした笑顔で俺を見上げたのは、玲奈ちゃんだ。きっと間違いない。
ずっとずっと忘れていた。彼女と俺は、10年前に会っていた。そして10年たっても変わらない笑顔で俺の心に飛び込んできた。
どんなに好きだと言われても、好きで結婚した女ひとり幸せに出来なかった俺が、玲奈ちゃんのきらきらした未来を奪っていい訳がなかった。
これからどんどん美しくなっていく彼女を見れないのは辛いけれど、玲奈ちゃんだったら真っすぐに相手の心に飛び込んでいくだろう。
ああ、こんな自分にもまだ人を思いやる気持ちがあるなんて。彼女を、玲奈ちゃんを愛おしいと想える気持ちが沸くなんて。なくす時に初めて気がつくなんて。