君のいる世界

「知ってます。あたし奥様にお会いしました。とっても綺麗な人で、ヤキモチ焼いちゃいました………奥様からの伝言です。『幸せになって』ねって……」


 かさかさと紙を広げて見せてくれる。それは離婚届で署名と捺印がされていた。玲奈ちゃんにそれを託したというのなら……


 もう、会いたくないんだろう。


 きっとあの熊がお節介を焼いて、病室に呼んだ所に玲奈ちゃん達がいたから、離婚届を託して帰ったんだろう。


 誰もが幸せになりたい。


 でもその幸せの形は、人それぞれで脆い。大切な人のために仕事をして心の距離が開いてしまうのなら、仕事をしなければよかったのだろうか?


 カメラを持たない俺なんて、存在価値すらない。そう思っていたのに、俺の全てを包み込んで奪ってしまう。


 被写体である彼女に夢中になるのは、いいカメラマンとして当たり前だ。そう納得しようとした。


 だけと全てを欲しくなったら、それは恋だ。
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