君のいる世界
部屋から出てきたあたしに、さっきのママが子供と一緒にくる。
「あなたしっかりしてるのね。あんなに転んで大丈夫か心配してたのよ。あなたがドアを開け放したままだったので、中の様子がようく聞こえたわ」
「派手に転んで、かえって落ち着きました」
へらりと笑うと、安心した二人も笑い返してくれる。
「それよりタオルありがとうございました。Tシャツがびっしよびしょだったので助かりました」
張り付いたシャツでブラが透けるのを、なんとかタオルで隠しているという状態。ああ本当タオル借りれてよかった。タオルを返そうとして、使った物を洗わないで返していいのか、迷う。ここは洗って送り返すほうがいいんじゃないか。
「あのっ洗って返しますので、住所教えてください」
すると、ママが笑いながらバシバシ背中を叩いてくる。
「タオルくらい気にしないで。それはあなたにあげるわよ。有名になったら、この話をしてくれたらいいわ。カッコ良かったわ」
カッコいいなんて、今まで生きてきて一度も言われたことがなかった。まだ14だとしても、あたしの人生は今までぱっとしなかった。