君のいる世界
現在
「あっつい…」
温度管理されている那覇空港から出ると、たちまち熱気があたしを包んだ。日差しも傾いたというのに、まだ熱をはらんだ空気がわだかまっていて夏のようだった。
東京から数時間で、気温がぐっと上がり夏みたいに暑くなってしまうことが不思議でしかたない。
まだ春なのに、夏のグラビアを撮影するのだから、ちょうどいい。
からからとキャリーバックを引いてタクシーの列に並ぶ横で、スタイリストさんがスマートフォンで電話をかけていた。
「もしもし伊部さん、今空港につきました」
『お疲れーこっちはセンセイと呑んでるから、ゆっくり宿泊先に行くといいよ。場所、わかるよね? 』
「わかる訳ないじゃないですか~タクシーまかせですよ」
『ははっそれもそうだ。柄の悪い人もいるから、気をつけて』
スマートフォンから洩れ聞こえる声をなにげなく耳にしていたら、まわりの会話を拾ったらしく声が聞こえた。
『俺にも泡盛ちょうだい』
がやがやとした雑音のなかその音だけがクリアに聞こえた。