君のいる世界


なんでとかどうしてとか青木さんは聞いて来なくて、あたしを見守ってくれた。

「山崎礼治さんはあたしが一番影響を受けた人なんです」

憧れているという言葉では表しきれない、いちいちメンドクサイ感情に陥ってしまう。会いたいという気持ちと裏腹に感情が暴走してしまいそうな自分が怖くもあった。

初めて礼治さんの作品を見てから会えるまで10年かかっている。そのバカみたいに長い間に、あたしはこの気持ちについていつも考えていた。

写真集の発売と同時に開かれていた個展で初めて見た作品は、印画紙から人物が立ち上がってくるような存在感があって食い入るように見つめていた。

ほの暗い闇から浮かび上がる女性の肌が滑らかで光を弾いて輝いているように見えた。



なんて綺麗なんだろう…


飽きることなくその写真を見ていたあたしにおねーちゃんは呆れて、早くお買い物に行こうと散々催促された。

今年の服をまだ買ってもらっていないし、あのお店の新作スイーツが食べたいと両親にねだっていた。

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