君のいる世界
生きている物、その花や木もみんなおじいちゃんが丹精こめて育てているから美しく咲いていた。
ほんとにキレイなのは、そんな花を育てられるおじいちゃんの心なのかもしれない。
緑の指を持つおじいちゃんのことを自慢に思っているのに、酷いことを言って傷つけてしまった自分は本当にダメだ。
伸ばした腕の先で立葵に焦点を合わせる。ピピッと自動でシャッター音がしてメモリーに記録される。
振り向いた先にあるおじいちゃんの笑顔は優しくてあたたかくて、我が儘を言って困らせてしまうことはもう止めよう、そう強く思った。
「いろいろ玲奈の好きなものを撮ってみるといいよ」
「……うん。ありがとうおじいちゃん」
やっと素直にお礼を言えてほっとする。おじいちゃんちにいる間ずっと気まずいままなんて耐えられない。
ごほん、とおじいちゃんが咳をした。
「おじいちゃん、風邪? 」
「そうかもしれないな。喉のあたりが変なんだよ。でも熱はないし、玲奈には移さないからな」
慌てて体を離すのがなんだかカワイイ。
「大丈夫だよ。玲奈は強いんだから」
あたしはおじいちゃんの腕にぎゅつとしがみついた。そうしてふたりで庭を眺めていた。