君のいる世界

ひとりでにまにましていたあたしに、おねーちゃんが封筒を差し出した。

「自分に来てる郵便物くらいちゃんと片付けなさいよ」

「はーーい」

しぶしぶと封筒を裏返すと、ピンクラビッツの事務所からの封筒だった。あーーこれは履歴書が送り返されてきたパターンだ。ちょうどオーディションの書類を書きまくっていたから、どこかの封筒にそのまま入れちゃおう。

なんの感慨もなくハサミを封に差し入れ切り込みを入れる。パチンとハサミを閉じてテーブルに置く。ごくごく普通に。


中味を引っ張り出す段階で、何だか違和感を感じた。あれ、履歴書の紙ってこんなにさわさわと手触りが良かったかな?

そして取り出した紙はまた何だか高級感溢れるもので、艶々としたクリーム色に印刷のブルーが透けて見えている。


うわ、何だか間違って来てる。

いや、もしかしてDMの類だとしたら、またおかーさんに怒られる。あちこちに大量の履歴書を送っているので、なかには劇団の誘いやタレント事務所の募集とやらも混じっているのだ。
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