君のいる世界
「待っていたわ!! 」
振り向くことも来ずに背後から体をホールドされる。
何これ!! 誰これ!!
「あの人間違いでゎないでしょうか… 」
あたしにはいきなり抱きついてくる大人の知り合いはいない。
「そんなことないわよ。柏崎玲奈ちゃん。あたしが人を見間違えるなんてないもの。来てくれて良かった。もし来てくれなかったら拉致しなくちゃいけなかったから」
そうしたら犯罪だものねー
くすりと笑いながら危ない思想を耳元で垂れ流した。
ダダ漏れてますけど!!
小鹿のようにガクブルなんですけど!!
衝撃で固まっているあたしに構わず、体をずらして正面から見つめられる。
「ああ、何にも変わらないわ。このシャツもオーディションと一緒ね」
にっこりと微笑んだのはピンクラビッツのオーディションで会ったあの人だった。
なんでここにいるんだろうと思って、ピンクラビッツの人だったら会社のイベントに居るのもおかしくないと考えなおす。
遣り手の営業さんとかかもしれないし。
「あの、封筒を頂きまして…オーディションではありがとうございました」
「いいのよ、いいの! 立ち話もなんだから場所を変えましょうか」
言うなりぐいぐいと腕を引いていく。こちらなんてお構いなしに入り口を通過して通路をどんどん歩いていく。