君のいる世界


ぐいぐい連れて来られたのは、たくさんの衣装であふれた部屋だった。

ハンガーやトルソーに衣装と小物、靴などが所狭しと並んでいた。キラキラしてカワイく見えるのは、ピンクラビッツのものだからかもしれない。

「さやちゃん~玲奈ちゃん到着しました~」

奥へと声を掛けると、人が飛び出してきた。背が高くて猫目なのが印象的だった。


「もう嫌ですよ~時間なんて幾らあっても足りないんですから、こういうこと止めてください! 」

「だってやっぱり憧れるじゃない、シンデレラストーリーって」

「そんなのお伽話です。リアルに求めないでください」

半泣きでも手は動くようで、あれこれと衣装をあてがいそれに合わせて小物を選んでいく。

「あの、なにをしているんでしょうか…」

自分だけが状況がわからなくて、どうしたらいいのかわからない。

「やだ可哀想。説明もしてないんですか!! 」

「それはこれからなの。今からするの」

「とっとと説明してください!! 」

こほんと咳払いして完璧な営業スマイルをつくる。

「柏崎玲奈ちゃんは、正式にピンクラビッツのモデルとして採用されました。今日はピンクラビッツの新作の御披露目を兼ねたショウがあるので此方まで来て頂いた次第です」

きゅっと上がった唇は完璧なまでに美しいのに、言ってることはとんでもない。

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