君のいる世界
「ミカさんが事務処理能力がないのは、ようくわかりましたから、あまり周りをわずらわせないように秘書でもつけて貰いましょう」
さやさんに、ため息をつきながら言われてしまう。
「ヒドい。あたしだって頑張ったのに」
ミカさんはまだ落ち込んだモードで、瞳がうるうるとしている。
「頑張るところが違います。ほぼ出来上がっていた服を作り直させた労力を他に回して欲しいだけです」
「……それはダメよ。あたしは女神(ミューズ)を見つけたの。他の何を妥協したとしても、それだけは譲れない。玲奈に似合わない服なんて作れない」
「あーーーもうっ」
頭を抱えてさやさんが唸る。
「それ、それがいけないんですっ! ミカさんには服を作ることしか出来ないんですから、大人しくしていてください」
咳払いをしたさやさんが、あたしに向き直る。
「ようく聞いてください。決めるのは玲奈ちゃんだけれど、あなたはまだ中学生でモデルをするにしてもご両親の承諾が必要になります。
ミカさんに任せておいても、ちっとも話が進まないので、また日を改めて契約していただくことになります。
問題は今日なんです…ミカさんが言うように、ピンクラビッツの服のモデルは玲奈ちゃんにしてもらいたいの」