君のいる世界
着る衣装は3着。最終のチェックをミカさんにしてもらってステージ袖に進む。
一着目は、ふわふわとしたファーをあしらった上着に、ふんわりしたスカートだ。
まだ残暑のある今でも、ステージでは秋冬の装いになる。温度調節がされている会場のため、汗は浮いてこない。
意外にも照明が発する熱が暑くて、会場を埋め尽くす人の熱気に足元が震えた。
「いいよ。玲奈ちゃんは、そのままで。上手く歩こうとか気にしないでいいから、ステージの端まで行ったら止まってポーズをとって帰ってくればいいから」
緊張から言われたことに、こくこくと頷くしかできない。
前のモデルさんがランウェイに進むのを見て、足をすすめる。
「よく似合ってる。玲奈ちゃんは、誰よりもピンクラビッツを着れているから。拍手も喝采も溜め息もみんなあなたのものよ」
とん、と背中を押された。
触れられた背中がじんわりと温かくなる。