君のいる世界
「やっぱりあたしが服を選びたかったわ。でもあたしが作った服なのに、きちんと玲奈ちゃんの服になってる」
きゅっとコートの襟を直してくれながらミカさんが寂しそうな顔をする。
「ミカさんが作ってくれるなら、あたし何回だって着ます」
何か言ってあげたくて、とっさに口にできたのは叶うかもわからない未来のことで…
それでも口にしたなら、何が変わる気がした。
あたしの言葉にミカさんは微笑んでくれて、そっと服から手を離した。
「そうね。まだショウはあるもの。楽しんねきて」
ふわっと風が動いたから、入れ違うようにランウェイに足を進めた。モデルがすれ違う。
ちらりと向けられた視線がチリチリと身を焼いた。
『無様なショウにしたら許さない』
視線からそう感じた。モデル志望だなんて言ってたって、素人より使えないそんなふうにだけは言われたくなかった。
同じステージ立つからには他のモデルにも認めてもらいたい。イメージした完璧なウオーキングできちんと歩きたい。