君のいる世界
まぶしすぎるランウェイにいるのは、あたしだけ。
背筋を伸ばして自信をもって。
今だけはピンクラビッツの力を借りて、この会場全部の視線を集める。
ステージから降りたら、ただの子供でしかないあたしだけど、今だけは…力を貸してください。
遠く感じていたさざ波のような人の気配。会場に集まる人の衣擦れ、吐息、話し声、その上に音楽がのってMCの解説が入る。
最初の時よりも落ち着いて歩けてる。歩きながらも溜め息や、かわいいって声を拾える。
今だけは。このランウェイを歩ききる40秒だけは、あたしをミカさんの服を見てください。
ランウェイの端でコートが綺麗に見えるようにポーズを取る。中に着ている薄手のニットとスカートも見えるように。
わあっと声にならない吐息が生まれる。ミカさんの服を褒められた嬉しさに、思わず笑みがうく。
途端にざわりと会場がどよめいた。やだ、カワイイそんな声が耳に届く。
ミカさんの服はカワイイよ。ピンクラビッツのお店を覗いてみてね。そう心のなかで答える。
あたしの着た服を見て、そう言ってもらえるなら……すごく嬉しい。みんなミカさんの服が素敵だからだけれど、その服を綺麗に可愛く見せられたらなら…少しでもそう思ってもらえたならいい。