君のいる世界

バックステージまで戻ると、ミカさんが良かった良かったと背中を叩いてくれた。

「プロのモデルだってこんなに会場からため息なんて貰えないから」

嬉しそうなミカさんに笑い返して、「ミカさんの服がいいからです」と首をすくめた。そのままキャアキャアとガールズトークになりそうなのを、さやさんがあたしを引き離すことで止める。


「まだ終わってませんから。最後の服を出してからやってください」

「わかってるわよ。着替えきて」

にこやかに笑うミカさんを背にして、最後の服を着るためにもどる。





怒られるかもしれない。

この服はミカさんにとって、特別に見えた。この服だけトルソーに着せられて靴も小物もコーディネートされていた。

見た瞬間から惹かれていた。

この服は他の服に紛れるように飾ってあったのに、この服だけが特別なオーラを出してあたしを呼んでいた。

『あたしを着て』

服に感情があるのなら、口があるのならきっとそう言っていた。





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