君のいる世界



 そばにいた礼治さんと伊部さんも拾うのを手伝ってくれるけれど、恥ずかしくてたまらない。

「すみません、玲奈はほんっとあわてんぼうで」

 青木さんも、屈んで遠くにとんでいないかと探してくれる。

「いいんじゃないですかねぇ。元気があるのはいいですよ。年をとってくると余計です」


 穏やかに笑いながら礼治さんが、ゴムを渡してくれる。わずかに触れた手が温かくて、緊張で冷たくなった手を燃やすほどの熱を生み出す。

 会いたかった。

 あたしを見て欲しかった。

 そして話してみたかった。

 それは全て叶ったことになる。たとえどんな恥ずかしい出会いだったとしても、あたしは山崎礼治さんに会うことができたんだ。


 ずっと会いたかった人に。

 礼治さんの笑顔につられるように、自然に笑顔になることができた。

「ありがとう」



 そう言って受け取ることができた。
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