君のいる世界






 写真を見たら、誰だってわかる。


 おじいちゃんは、あたし達の誰もが大好きで大切にしてくれたことが。どの写真も幸せそうな笑顔で満ちていて、撮った者と撮られる者との距離がとても近い。



 おじいちゃんから貰った大切なこのカメラに残すメモリーなら、いい加減なものは残したくないと思えるほど、このカメラを大切にしていた。

 貰ったばかりの頃たくさん、たくさん撮った写真はパソコンにデータを落として保管している。もちろんなくしたくない、おじいちゃんのデータもパソコンに保管したのと同時に、データをディスクに焼き、現像をし、そのうえでメモリーカードに残している。

 カメラを扱ううえで、無駄だといえるデータであったとしても、消すことをしないで、いつでも呼び出せるようにメモリーカードに残している。



 このカメラで、おじいちゃんが見た物と同じものを見てみたい。このデータをお守りのように残しておくことで、それが叶う気がしていた。

 おじいちゃんが私達にむける気持ちのように優しく細やかな愛情で、おじいちゃんに見せてあげたい写真を撮りたい。



 すっと伸ばした指先が、構図を決めるとブレ補正と明るさの調整がされてシャッターが切られる。


 鮮やかな南国の海を染める、オレンジ色の太陽と金色の明るい光。この太陽が昇りきったら、あたしは礼治さんに写真を撮ってもらうんだ。

 初めて仕事として、山崎礼治という人と向き合うことになる。それが、怖くもあって、それでいて嬉しい自分がいた。

 この仕事の間だけは、礼治さんはあたしを……ううん、あたしだけを見てくれるんじゃないか。

 期待とそれ以上の不安が渦巻いてきて、あたしはまた深呼吸をした。

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