君のいる世界

「それは残念だね。なら、小腹がすいた時のために、小さめなお握りでも用意してもらおうね」

 まったく煩わしさを感じないのか、礼治さん自らが給仕のおばちゃんに掛け合ってくれる。

「お手間を掛けさせてすみません…」

「気にしなくていーよ。撮影も体力勝負だからね。お昼の注文のついでだよ」


 笑顔も眩しいくらい素敵です。

 これからこの人と仕事をするのかと思っただけでドキドキと鼓動がうるさい。

 これは夢なんかじゃなくて、ずっと目指して頑張ってきたからなんだ。だから、最後の調整もきちんとしたい。

 少しでもベストなコンディションで望みたい。



 すうっと息が楽になる。

 朝の起き抜けには、水を飲む。これはおじいちゃんからも言われていたし、おかーさんからも言われている。

 綺麗な水をコップに注いで一杯飲む。

 まだ何も口にしていない体を水が滑り落ちていく。

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