君のいる世界


「本当…?」

お世辞だとわかっていても、嬉しくなる。今までの努力が報われたみたいで、思わずうるっとしてしまう。


「かわいいよ」


言いながらも礼治さんはシャッターを切る。シャッターを切る礼治さんの視線が肌を撫でるようでチリチリする。


「礼治さん、あんまりイジメないでくださいね。玲奈ちゃんまだうぶだから」


見かねたのかスタイリストの青木さんから声がかかる。恥ずかしくてたまらなかったので、思わず頷いてしまう。


「ひどいね。イジメてないでしょ褒めてるのに酷い言われようだ」


悪びれることなく礼治さんは青木さんと話しているので、少しの間クールダウンができる。礼治さんに見つめられるだけで、どうにかなってしまいそうな自分を落ち着かせる。

セクシーとか、野性的って礼治さんのためにある言葉だ。


「モデル恥ずかしがらせてどうするんです?口説いてるんじゃないんだから」

「ははっ。まったくね」


笑いが出て場が明るくなったので、ほっとする。礼治さんが笑ってくれていると安心する。お姉ちゃんとくらべたら、出来損ないのお馬鹿なあたしでも、こうしてなんとか憧れていた人の前に立つことが出来ているんだから。
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