君のいる世界

気が付けば三人の男の人に囲まれて動けなくなっていた。慣れない砂浜に足をとられて回りを全然見ていなかったから、囲い込まれて声をかけられるまで近づいてきた男の人に気がつかなかった。


「だからね、飲みに行こうよ」


「大丈夫だって。俺らと居るって言っとけばいいっしょー」


「あのっ基本団体行動というか、自分勝手なのはダメなんですっ」


さすがに今日はもう撮影がないと言っていたけど、誰にも何も言わずにどこかに行くなんて出来ない。連絡しようにも、水着なのでスマホすら持っていない。

馴れ馴れしく肩に手をまわそうとした男の人の体が傾いて、怒った顔の礼治さんが顔を出した。


「…何だよ、テメエは」

「悪いけど、その子連れなんだよね。その汚い手を引っ込めてくれない?」


礼治さんは笑ってはいても、目は笑っていなかった。やっぱり怒っていたのは見間違いじゃなかった。こんな所でナンパされてるなんて、バカでしかない。実際バカなんだけど、礼治さんに見つかるなんて恥ずかしい……
< 75 / 181 >

この作品をシェア

pagetop