君のいる世界
礼治さんを見た男の人達は、オッサンなんて人数の力で捩じ伏せられると決めつけて、薄ら笑いを浮かべた。
心細い時に来てくれた礼治さんは、物憂げな怒った顔をしていて、いつもの優しい礼治さんではなかった。あたしがバカなので怒っているんだろうけど、当たり障りなく人との間を上手くとっている礼治さんは、怒りのような負の感情をはあまり出さない。
あたしがポーズのことで不愉快にさせてしまった時でさえ、自分の感情を隠すように離れていった。怒っている礼治さんはレアかもしれない……
「無理しないの、お、じ、さ、ん。若者の恋愛に口出ししないでくれる」
「そーそー自由恋愛っしょ」
「無理だよ。あんたらじゃ彼女の足元にも及ばない」
どうして彼らが足元にも及ばないのかわからない。恋愛スキルもなくて、こんなふうにナンパされて自分で上手くかわすことすら出来なくて
、礼治さんに助けてもらっているのに。
「聞いてみたら」
にこっと笑った礼治さんは、腹黒い笑みでした。付いて行くとかないよね?そんな心の声が聞こえてきそうです。
「あたし、行きません。ごめんなさい」
また髪が地面につくようなおじきをした。
「ね。だから無理なんだよ。ナンパなんかしなくても彼女は出来るから」