君のいる世界
「なんだよお高くとまりやがって」
「ちょっとカワイイくらいで調子に乗るなよな!」
不愉快さを隠しもせず、言い捨てて去っていく。一年のほとんどを観光シーズンとして暮らしている沖縄では、ナンパも当たり前なんだろうか。
いや、ナンパに季節は関係なかった。渋谷とかナンパやスカウトの人で溢れているっていうのに。
「すみませんでした礼治さん。それから助けていただいて、ありがとうございました」
ふっと力の抜けた礼治さんが笑みを浮かべた。おかしくてそして、安心したような笑みでまた胸をつかまれたように、鼓動が早くなる。
「きっとあの子ら写真集が出たらびっくりする。玲奈ちゃんのことそこらへんの子と同じに見てるなんて、ある意味スゴイことだよ」
「あたし華やかさとか無いんで……」
ぱっと見ただけで芸能人だとわかる人だっているのに、モデルをしていてもグラビアを撮っていてもあたしは一般人と変わらない。
あたしがもっと芸能人オーラみたいなものを出していたら、きっと寄ってこない類のナンパだった。