君のいる世界

「セカンドオピニオンの紹介状を書いてもらえばどこでも診てもらえますよ」

「そうだなぁ。じゃあその紹介状とやらを貰ってみようか」


 ちょっとほっとしたおじいちゃんの顔色が明るくなって、みんながほっとする。


「そうだよ。専門の先生に診てもらって何でもなかったら、安心じゃない」


 そう言ったのが、3ヶ月前。それからセカンドオピニオンの大学病院で喉に腫瘍が見つかった。それから慌ただしく検査の日程が立てられ、おおまかな手術の日程も打ち合わせがされる。

 手術に向けてのカンファレンス、検査入院で1日の尿の量や諸々の詳しい数値をどんどん取っていく。


 手術まで、あっという間だ。


 窓の外では、やっぱり何も変わらないみたいにゆらゆらグライダーが揺れて流れていた。急に旋回して地面近くまできても、また風に乗って上昇できるのは不思議だ。

 エンジンなんてついていないのに、あんなふうに軽やかに空が飛べるなんて。
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