君のいる世界


 玲奈ちゃんから離れながら、どう礼治さんに言ったらいいのか悩む。あの人はマネージャーで不審者なんかじゃありませんでした……これかな。考えこんでいたので自然と俯いてしまう。

 さくさくと砂を蹴立てる足を見ながら進むと、ふいに視線を感じた。こちらに体を向けて礼治さんは俺と、それからきっと玲奈ちゃん達を視界に入れていた。




 髪を風になびかせて、まるで獣の王のように。

「礼治さん……」



 唇を覆う手にはタバコが挟まれていて、風に煽られた煙りが礼治さんに纏わり付き、近寄りがたい雰囲気を漂わせていた。



「すまなかった」


 ぽつりと礼治さんが言葉をこぼした。


「余計な心配だったね」

「そんな…だって心配したっていいじゃないですか。解らないじゃないですか、そんなこと」


 この人は、なんて情けなくってどうしようもなくてバカみたいなのに…

 人間くさくて可愛いいんだろう



「あの人が問題ないなら宿まで戻ろう」

「心配じゃないんですか」


 先に歩き出していた礼治さんが、顔だけ振り返って煙りを吐き出した。


「相手はマネージャーだよ。大丈夫だ」

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