君のいる世界
「………ヒドい。結輝さんはあたしを守ろうとしたくれたのに追い払ったりして」
ばさばさと音をたてる風に長い髪がさらわれ頬を打つ。不快感マックスだ。
「なら追いかけて釈明したらいい。私がマネージャーだという事実は変わらない」
「違うっ言い方だよ……あんな一方的に悪いみたいに言って」
きっと結輝さん傷ついてる。橘マネージャーは、現場の雰囲気を考えてくれないのかと唇を噛む。
ギスギスしたりとかイヤなの。みんなで仲良く、楽しく撮影したい。
目を細めたマネージャーは呆れてるんだか怒ってるんだか、その美貌に変わりはなかった。
「自覚がないなら言っておきます。今はまだ恋愛していい時期じゃない。スキャンダル一個で全部吹っ飛びますよ」
「わかってるもの、そんなこと! 」
これから出会う人や、今まで付き合いのある人に対してもそんなに気をつかわせたりしたくない。
もうため息しか出ない。
「帰りましょう。玲奈」
だから帰ろうと体の向きを変えたマネージャーの後を付いていくことにした。