雪のような恋。
次の日から明石も学校へ来なくなった。
俺は明石から溢れてくるまでの罪悪感を感じていた。
その気持ちは少し、わかる気がした。
俺が許せなかったのは、美雪が学校へこなくなった原因たちが
いつものように笑って過ごしていることだった。
白井のように、俺も美雪のために何かしようと
その時は本気でそう思っていた。
今思えば、それは自分の罪悪感を払拭したいという
自分勝手な願望だった。
きっとその時の俺もわかっていたはずだった。
でも、日に日に重さを増していくそれを
できるだけ軽くしたかったんだろう。
3学期も中盤に差し掛かった頃、
終礼が終わった後、美雪を虐めていたグループが
話しているのを聞いた時、俺のその願望を
叶えなければならないという衝動を抑えきれなくなった。
「空野が来なくなってやっとスッキリしたのに
なんで鈴まで来なくなったんだろうね」
「まあ、鈴なんて居ても居なくてもどっちでも良いけど」
そう言って、笑っていた。
俺は静かに席を立ってその3人の方へ歩いた。
こいつらにも、せめて美雪と同じ苦しみを味わわせてやりたい。
その中の1人の机の上に置いてあった筆箱を
机の角に叩きつけた。鉛筆や消しゴム、ハサミが飛び散った。
こいつらは、美雪以上に悲しまなければいけない。
3人が何か言っていたが、何も聞こえなかった。
そのまま机を倒して中のノートや教科書を引き裂いた。
帰ろうとしていたクラスの男子が俺を止めようと近づいてきた。
俺は、落ちていたハサミを拾ってその歩みを止めた。
こいつらのせいで、美雪がどうして傷つかないといけなかったんだ。
ハサミをそのまま3人のランドセルに突き刺した。
何度も何度も。ランドセルは穴だらけになった。
でも、俺は満足できなかった。
怖がって離れていた3人に、ハサミを持って俺が近づいたところで
白井が俺の肩を引いて止めた。
どうやら、俺は泣いていたらしい。
「ふざけんな。ふざけんな。ふざけんな」
泣いてそう言いながら、暴れていたと後に白井から聞いた。
先生が走って教室に飛び込んできた。
そして俺は押さえられて、相談室へ運ばれた。