雪のような恋。
美雪は少しの間、黙ったまま地面の落ち葉を見ながら
歩いた。
「風太は?」
聞き返されてハッとした。
美雪が好き。と答えたらどうなるだろう。
美雪はどんな顔をするだろう。
その時、みんなの気持ちが少しだけわかった気がした。
でも、俺は怖がってしまった。
もしもこれで美雪と一緒に帰ったり遊んだりできなくなったらどうしよう。
そんな気持ちが勝ってしまった。
「いないよ」
俺がそう言うと
「みゆきも」
と言って、美雪は手袋で顔を覆ってため息のように
ハー、と手と顔を温めた。
少し恥ずかしくなって、美雪の後ろを歩くと
大切に使っていたはずの美雪のランドセルの横側に
傷を見つけた。確かに朝はなかったものだった。
それから数分の道のりは、とても短くて長かった。
俺は心臓が浮いているような不思議な気持ちになって
その傷のことさえ上手く話せなかった。
「じゃあまた明日」
その日は遊ばずに家に帰った。