双姫 Ⅱ
「……兄は逃げたんですよ。」
逃げた…?
『それは嫌な事を強要されれば
誰しも逃げたくなります。
私だって沢山ありましたわ。
貴方にはありませんでしたか?』
「…それは……。」
逃げた事が無い人なんて逆に居る?
居たら盛大に褒めて上げたいわ。
「アレとはもう他人です。」
『…不思議ですね。
動物は子を産むと当然のように愛します。
それは人も同じ。
そんな当たり前の事が
魁と私には与えられなかった。
幸い、私には家族が出来ましたけど。』
「…貴女、養子なのですか?」
だんまりを決め込んでいた母親が口を開いた。