双姫 Ⅱ
翠side
思いがけない言葉に足を止める。
「俺の兄貴なら、顔見せに来いよ!!」
こんな俺を兄だと思ってくれるのか。
「組なんかに引き取られてロクな育てられ方を
されなかったんだろうと思っていたが…。
その心配はいらなかった様だな?」
良い奴に育った様で安心した。
「気が向いたら会いに行く…。」
今迄、汚い事をして来た俺は
何もかもがどうでも良いと生きて来た。
只、どこかで生きている弟が気になっていた。
幸せか?
ちゃんと不自由無く過ごせてるか?
そんな時、
この依頼を受けて偶然にも見つけたんだ。
「あぁ、待ってる!」
無邪気な笑顔を俺に向けて類は走って行った。
「待ってる…か。」
嬉し過ぎて口角が上がる。
「その前に後片付けをしねぇとな。」
崩れ落ちる落石を避けながら俺も屋敷の外を目指した。
翠sideEND