次も、優しく丁寧に。
次も、優しく丁寧に。

*********

 近付いていく私を見つけると、彼は気だるげにため息を吐いた。
 ただでさえ着崩して着ているスーツの上着をおもむろに脱ぎ、シャツのボタンをひとつ外してネクタイを緩める。やる気がないのが一目瞭然だ。

「……ちょっと、やる気出してよ」

 声をかけたところでもう一度、しかも今度はわざとらしくため息を吐かれる。
 どうしていつもこうなんだ。
 他の子が会いにくるとにこにこと愛想を振りまいていて「ホストか!」って突っ込みたくなるくらいなのに。

「だーってさぁ。お前、下手なんだもん」
「なっ」
「いつになったら上手くなるわけ?なあ」

 はーあ、とまたため息。
 長い脚と両腕を同時に組みながら私を呆れたように見てくる。


< 1 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop