次も、優しく丁寧に。

 すべてを見透かすような瞳に、私はいつも何も言えなくなってしまう。
 相性が悪いんだ。
 この人とはどうしてもうまくやっていけない。
 だけどそれですべてを済ませてしまうわけにもいかないわけで。

「下手なことは認めるけど」
「だろ?いっつも丁寧に優しく教えてやってんのに、ちっともうまくなんねーんだもん。そりゃ俺のやる気も削がれるっつーの。センスないんじゃね?」
「センスがないのも認めるけど!」
「まーなぁ。上手い子は最初から上手いもんな」

 ぐ、と言葉に詰まる。
 確かに、私よりあとにこの人に会いに来た子は最初からとても上手かった。

「つーか下手なヤツのほうが希少。つまりお前が下手すぎ」

 図星を突かれてばかりで言い返す言葉が見つからなくなり思わず俯きかけつつ、つい先ほどこの人に関する噂を耳に挟んだことを思い出す。

「……今日は頑張るから、お願い」
「はいはい」

 仕方ねーなぁ、と言いながら私へ手を伸ばすこの人に、それを言うかどうかが問題だ。


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