Another・Cinderella

出会い

ちょっと寝ようかな。
そう思いベッドに入ったときガチャっとドアが開く音がした。

「あれ〜?もう戻ってきたの?」

と、ドアの方を向くと、そこにいたのは同い年くらいの男の人だった。

「えと…どうされました…?」

「莉々夏っ!!!」

そう言って彼は両手で私の頬を挟み、不安げな瞳で見てくる。

「あの…」

「あっ、ごめん。記憶が、ないんだってな。大丈夫か?」

「あっ、はい。」

「少し話せるか?」

私はこくりと頷き、イスを出した。

「ここ、どうぞ。」

彼はイスに腰を掛けると口を開いた。

「なんで…記憶がなくなったんだ?」

「ハッキリとは分からないんです。ただ、先生は、何か私にとってとてもショックなことがあったんじゃないか。って。」

「そうか。俺のことも、覚えてないん…だよな?」

「はい…。すみません。」

「いいんだよ。仕方ないことだ。」

それから彼と他愛もない話で盛り上がった。
何だか彼はとても話しやすかった。

すると慶ちゃんから電話がかかってきた。
「あっ、すみません。いいですか?」

「あぁ。」

彼の返事を聞いてから私は電話に出た。

「もしもし。慶ちゃん?どうしたの?」


内容はいつもかかってくるのと同じ。

慶ちゃんは、私の体調を気遣って、大丈夫か?っていつも電話してくれる。

「大丈夫だよ。うん。うん。わかった。じゃあね。」

「誰だった?」

彼が聞いてきた。
慶ちゃんって言っても分からないよなぁ。
「彼氏からでした。」

そう言ったとき、彼はとても驚いた顔をした。

あっ、そうか。普通に言っちゃったからか。秘密なんだったあ〜…。

「あっ、こ、これは、秘密でっ!!」

両手を顔の前で合わせてお願い、とポーズをする。

彼はフッと笑って

「大丈夫、誰にも言わないよ。」

と微笑んだ。


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