Another・Cinderella
この人もすごいイケメンだ。
爽やかだなぁ〜。

「莉々夏、二人で話せるか?」

お母さんたちは向こうに言ってるわね!と離れていってしまう。
ちょっと!イキナリ二人っきりって!記憶がないんだってば!

まあお母さんたちとも親しげだし、一緒にいてなんだか安心するからいいんだけど。


彼は私を人目につかない場所まで連れて行くとイキナリぎゅっと抱きしめた。

「わぁっ////」

「はぁ〜っ、良かった、無事で。」

無事もなにも記憶をちょっぴし?失っただけなんだけど…

ってかはなして…欲しいかな。

「あ、あのぅ…はなしてもらえますか…?」

「あっ!悪い!そうだ、記憶がないんだった…。つい何時もの癖で。」

「癖…?」

「全部覚えてないのか。俺たち、付き合ってたんだよ。」

「えっ?!私たち付き合っ」

私たち付き合ってたの?!そう言おうとした時、彼の大きな左手のひらで口を押さえられて残りの言葉がごにょごにょとなった。

彼は空いている右手の人差し指を唇の前に持っていくと
「しーっ!俺たちは芸能人だ。誰にもバラしちゃいけないんだよ。」

と言った。

そうか、確かにバレたら大スクープになっちゃうな。と思いながら彼の左手を口元から外す。



「でもまあ莉々夏、前の自分に戻ろうとしずに、新しい自分になったつもりでいいんじゃないか?新しい世界にワクワクしながら進んでいけばいいんだよ!」

「そうだね!!そういえば、名前…慶一くん?だったっけ?」

「プッ、フハハハハハハハハハ」

彼は病院だというのに吹き出してお腹を抱えて笑いはじめた。
なにがそんなに面白い?

「け、け、慶一くんって、ハハハ、新鮮だなぁ、ハハハハハハハ。前は、けいちゃんって呼んでたよ。」

「けいちゃん、かぁ、わかった!」

それだけでそんなに笑えるのかな?けいちゃんの笑いのツボは分からない、と思った。
でもけいちゃんの言うとうりだな。
新しい世界でまた一から始めるつもりで頑張ろう。私はそう決意した。

そして、今はまだ、けいちゃんの発言が、記憶を失ったことと関係があるという事を、私は知らない。
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