保証書付きのシンデレラ
保証書付きのシンデレラ
月末のオフィスで今日もまた残業中。
どうせなら、憧れのあの人と二人きりになれるまでここにいよう。
早く帰ってよ、城田くん。そう思いながら声を掛ける。
「城田くん、どう、まだ時間かかりそう? 私、手伝おうか」
「いえ、ちょうど今終わったところです」
「よかったー。城田くんは頑張り屋さんだから。無理しないようにね」
「うぅ、雛形先輩っ」
城田くんの目に滲む涙。瞬きをする度に長い睫毛が濡れていく。
「なに、どうしたの、私なにか余計な事言った?」
「違います。雛形先輩が優しすぎるから」
もう、びっくりするじゃない。早く彼と二人きりになりたくて、城田くんに「今すぐ帰れ!」とでも言ったのかと思った。
「僕だけじゃないですよ。小堺もこの前言ってました。雛形先輩が残業手伝ってくれた、って。すっごく感動したみたいです」
そうそう、あの時も早く彼と二人きりになりたくて。
優しいから手伝ったわけじゃないんだけど。
「僕に雛形先輩の残業、手伝わせてください!」
「いいの、いいの。私ももう終わるから」
って、既に終わっている。
生命を与えられたかのように伸びるグラフ。素晴らしく美しい見事なまでの資料たち。
プレゼンの資料はデザインも重要なの。
私、デキる女なのね。なんて満足してる場合じゃない。
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