保証書付きのシンデレラ
「城田くんのお母さん、まだ退院したばかりなんでしょ。早く帰ってあげなさい」
「ううぅ……」
まずい、今度は確実に泣き出した。
涙が城田くんの頬を伝う前に、花柄のハンカチで拭いてやる。
その時、城田くんの視線と私の視線が重なった。
こうしていると、城田くんのチョコレート色の瞳に吸い込まれそうになる。
切れ長の額縁と長い睫毛がその瞳を更に強調していて、私は目を伏せるようにハンカチをポケットにしまった。
城田くんは超イケメンなのだ。そんな超イケメンよりも二人きりになりたい相手がいる。
「ほら、もう帰りなさい」
「わかりました。お先に失礼します」
「はい。お疲れさま」
「お疲れさまです」
儀礼的ではない『お疲れさま』を交わすと、やっと城田くんが帰ってくれた。
「城田っていいやつだよな」
「うん。でも私の王子様はあなただけよ」
私はそう言いながら彼の手を取った。
その瞬間、ヨハン・シュトラウスのワルツが流れてきて、このオフィスという現実的すぎる空間がお城へと変わった。
華々しい舞踏会の幕開けである。