保証書付きのシンデレラ
音楽に合わせて踊る、踊る、踊る。
彼と私の呼吸という周波数が一瞬の隙もないほど静かに結びつき、心拍数が重なっていく。
「私、優しくなんてないのに……」
「雛は優しいよ」
彼はそう呟くと私の腰をグイっと引き寄せた。
「私が残業を引き受けるのは優しいからじゃないのよ。仕事しかできないからなの。帰ってもする事なんてなにもないし。平凡な毎日をただ消化していくだけ」
本当にそうなのだ。
それなのに毎日が心の消化不良でやりきれない。
なにか始めようと料理教室にも通ってみたけど、作っても一緒に食べてくれる人がいないという寂しさに気付いてしまい……。
「ごめんな、ここでしか逢えなくて」
「ううん、あなたはここにいてくれるだけでいいの。私の王子様なんだから」
私は明日、三十七歳になるという自分を受け入れられずにいる。
友達はみんな結婚してしまい、前みたいには誘えなくなった。
疲れきった体と張り詰めた心を休めようと、有給休暇を利用して田舎へ帰ると、親戚の人たちに『まだ結婚しないのか』『お父さんとお母さんに早く孫の顔を見せてやれ』なんて言われて。
そんなのわかってるの。私の色んなタイムリミットが迫ってる、って。
年齢だけは加速していくけど、心がそれに伴っていかない。