クールな君の溺愛







宿題が終わった開放感で満ち溢れながら、さっちゃんにもらったフルーツオレをすすっていると、本を片手に横目でこちらを見やる藤堂くんと目が合った。

ん?と首を傾げる。


もしかして………

「藤堂くんも、フルーツオレ好きなの?」

もしかして、お仲間さん!?
嬉々として問いた私に

「いや、別に。」


一言こぼすと、また、藤堂くんは本の世界に入ってしまった。


なんだったんだろう?
もう一度聞いてみようとしたけど、

「おーい、授業始めるぞー。席つけー。」

先生が入ってきてそんなことはすっかり忘れてしまった。










授業が終わって、噛み殺していたあくびを精一杯した。

うん。よく我慢したよ、苺花。

あの子守唄のような授業をよく1日乗り切った!!


「苺花、なにしてるの。」

盛大にガッツポーズを決めた私を冷ややかな目でさっちゃんが見つめている。

「1日が終わった喜びを噛み締めてる。」

「ハイハイ。…で、苺花。今日からひとり暮らしなんだっけ?大丈夫?」


そうなのです!
今日から私、橘苺花は晴れて憧れのひとり暮らしデビュー!

ずーっと、ひとり暮らししてみたいって言っていたのだけど、心配性のお父さんが
「だめ!」
の一点張り。

でも今回、お父さんの長い1ヵ月間の出張が決まって、お母さんも着いていくからその間、体験でひとり暮らししてみなさいって言ってくれたんだ!


さっそく今日からひとり暮らしが始まるの!

荷物ももう送ってあるから、学校が終わる頃にはダンボールが部屋に積まれてるはず。


「部屋、借りたんだっけ?どんなところなの?」


「よくぞ聞いてくれましたっ!」


私が借りさせてもらったところは『楠木荘(くすのきそう)』っていう、ちょっと古風なところで、小さい縁側やお庭、畳のお部屋があったりして、おばあちゃんちみたいで落ち着くんだ。

「それにね!管理人さんの楠木さんっておじいちゃんがすごいいい人なの!」

1ヶ月という短い期間の契約だけど快く引き受けてくれて、

『なにか困ったら、いつでもおいで』

って言ってくれたんだ!


優しいおじいちゃんが増えたみたいで楽しみー!



「あれ…でも、楠木荘って………」

「ん?さっちゃんどうかしたの?」

「うーん。いや、なんでもないよ。」


兎にも角にもひとり暮らし楽しみだなぁ!





< 7 / 9 >

この作品をシェア

pagetop