クールな君の溺愛
宿題が終わった開放感で満ち溢れながら、さっちゃんにもらったフルーツオレをすすっていると、本を片手に横目でこちらを見やる藤堂くんと目が合った。
ん?と首を傾げる。
もしかして………
「藤堂くんも、フルーツオレ好きなの?」
もしかして、お仲間さん!?
嬉々として問いた私に
「いや、別に。」
一言こぼすと、また、藤堂くんは本の世界に入ってしまった。
なんだったんだろう?
もう一度聞いてみようとしたけど、
「おーい、授業始めるぞー。席つけー。」
先生が入ってきてそんなことはすっかり忘れてしまった。
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授業が終わって、噛み殺していたあくびを精一杯した。
うん。よく我慢したよ、苺花。
あの子守唄のような授業をよく1日乗り切った!!
「苺花、なにしてるの。」
盛大にガッツポーズを決めた私を冷ややかな目でさっちゃんが見つめている。
「1日が終わった喜びを噛み締めてる。」
「ハイハイ。…で、苺花。今日からひとり暮らしなんだっけ?大丈夫?」
そうなのです!
今日から私、橘苺花は晴れて憧れのひとり暮らしデビュー!
ずーっと、ひとり暮らししてみたいって言っていたのだけど、心配性のお父さんが
「だめ!」
の一点張り。
でも今回、お父さんの長い1ヵ月間の出張が決まって、お母さんも着いていくからその間、体験でひとり暮らししてみなさいって言ってくれたんだ!
さっそく今日からひとり暮らしが始まるの!
荷物ももう送ってあるから、学校が終わる頃にはダンボールが部屋に積まれてるはず。
「部屋、借りたんだっけ?どんなところなの?」
「よくぞ聞いてくれましたっ!」
私が借りさせてもらったところは『楠木荘(くすのきそう)』っていう、ちょっと古風なところで、小さい縁側やお庭、畳のお部屋があったりして、おばあちゃんちみたいで落ち着くんだ。
「それにね!管理人さんの楠木さんっておじいちゃんがすごいいい人なの!」
1ヶ月という短い期間の契約だけど快く引き受けてくれて、
『なにか困ったら、いつでもおいで』
って言ってくれたんだ!
優しいおじいちゃんが増えたみたいで楽しみー!
「あれ…でも、楠木荘って………」
「ん?さっちゃんどうかしたの?」
「うーん。いや、なんでもないよ。」
兎にも角にもひとり暮らし楽しみだなぁ!