恋チョイス



「ごめん。じゃあ」


ナカガワは払われた手をさすり、顔をそむけて走っていった。



あたしは、トイレに直行した。


個室に入って、裂けた紙幣をかぞえる。

自分の持ち金とあわせれば、ゴウダの要求額をゆうに越えるとわかった。


ドアのフックにぶら下げた、バッグを見あげる。

こうなることを予期していたわけでもないのに、全財産を持ってきていた。


半切れの紙幣を、手のひらにはさんで、ひたいに押しつける。

迷っていた。

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