恋チョイス



コインがざらざらおちて、返却口がいっぱいになる。


取りだそうとした手が、おかしいくらい震えていた。

下あごががくがくして、口のなかに、しょっぱい味がひろがる。



ケータイのメモリを探した。

重い受話器をもちあげ、もう一本電話をかける。



「はい、エイチエスアイ不動産、マエダです。ああ、アヤノちゃん」


「困ってるの。ケータイつながらないし、金ないし」


「ケータイ?」


「そう。すごいド田舎につれてこられてて、ずっと圏外になったまんまなんだ。それで」


「ケータイ圏外なの、契約解除したからだよ」



「え?」

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