恋チョイス
「おまえ、たいがいにしろ!」
ゴウダはついに、あられもなくわめきだした。
腕っぷしをたたいて、力説する。
「エスコートだよ、紳士のたしなみ! おまえ、ここ初めてだろ? このドアのところ、暗くてあぶないだろ? 転んだら、まずいだろ? おれの腕につかまれば、安心だろ?」
「安心? はっ、どうだか」
あたしは疑いにこりかたまって、胸の下で、腕をきつくねじりあわせた。
「すこしでも触ったら、あたし帰るから」
「エスコートぐらいさせろよ」
「触らないで!」
あたしは厳しくはねつけ、いよいよ腕をねじりあわせた。
ゴウダの下心を、ことごとく撃破したつもりだった。
けれど、あとから考えてみれば、この瞬間、まさにあたしは、ゴウダの悪だくみにはまったのだ。