恋チョイス



「コンビニによってもらえませんか?」


ハハオヤが、道すがらたずねると、おばさんは笑った。


「コンビニなんてハイカラなもの、この町にはありませんよ」


かわりに、商店街にあるスーパーと薬局によって、そのまま町を一回りしましょう、とふたりは話をまとめた。



会話のはずむ大人たちからはずれて、あたしは、弱味をみせまい、ときつく奥歯を噛みしめていた。


しだいに、実感されてきたのだ。

今日からここで暮らす、という現実が。


コンビニもない、
電波も入らない、
このド田舎で。

このあたしが。



寮についた。

車をおりると、さらなる、「現実」が待っていた。



うそでしょ。

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