恋チョイス
あたしは、ハハオヤのやとった興信所の人間に、家出さきから連れもどされた経緯をはなした。
もどかしさをまぎらせて、自分の腕に巻きついてみえる、ゴウダのタトゥーの墨色を、つやめくピンクのネイルで、ゆるゆるなぞり上げる。
「いわずに行ったら、つかまる。いっても、どうせ許されない。どっちにしろ、むり」
「そっか。めんどくさい親だな。友達は? 寮に残るやついないの?」
ゴウダは、肩にたっしたあたしの指をつかまえ、お仕置きするみたいに、前歯にはさんだ。
ゴウダの唇のうらのぬめりが、指にふれ、あたしに、これまで交わした、めくるめくキスの数々を思い出させる。
「だって友達いないもん」
あたしは、過ぎしキスに気をとられながら、軽くきこえるように冗談めかした。
「あたし、かわいいからさ、同性にひがまれるんだよね」