そんな彼に今日も溺れて
「トイレじゃないんだ」
「ムードないじゃん?」
誰もいない休憩室。
というより、こんな時間にここにいることがバレルと、いろいろよくない。
よくないけれど――。
「ここにいれば、問題ないし」
そう言って休憩室の戸を後ろ手で閉めれば、ドアのガラス窓の部分にカーテンをかぶせた。
まだ陽が昇る途中の、暖かな日差しが室内の温度を上げる。
「あ、暑いね」
私はそっと彼との距離を置こうとしたら途端に「ダメ」と言って近づかれてしまった。
「ちょ、ちょっと……」
壁にゆっくりと追いやられていく。
汗がすっと胸元を流れる。
「……なに?」
「なに、って。ち、近いよ」
「仕事中、もっと密着するのに?」
意識しすぎじゃないの?
そう妖しく微笑む彼の目に映る私は、彼のことを愛おしそうに見つめていた。