緑の家
ある森の入り口に、小さな木造の家屋がある。外壁は日に透ける草色をしていて、屋根瓦は雨上がりの苔色であった。一見すると森の一部だ。


誰言うともなく、その家は緑の家と呼ばれた。


緑の家では大そうじをしてはならない、という一風変わった決まり事がある。しかし本当のところは“大片付け”をしてはならない、という方が適切かもしれない。


それは、オーギーが10才のときに母親を亡くしてからの決まりである。


オーギーは緑の家の住人で、母子家庭の末っ子だ。当時姉は高校を卒業したばかりで、兄もまだ中学生だった。
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