緑の家
彼は広告の裏に走り書きされた文章を手に取った。それは母の字に違いなかった。


“今日のおやつは赤と黄色のサイレント”


オーギーは家中のあらゆるもに耳をあて、音のないものを探した。走り書きの文章は母の出題したクイズで、解答の場所におやつが隠されているのだ。オーギーは真剣に考え込んだ。


「魚の水槽は違うな」だって心臓が動いてるもの。
「冷蔵庫は違うな」だって電気が通っているもの。
「ベランダの窓は違うな」だって風が触れるもの。


そうこうしているうちに、兄のアーサーが中学から戻った。


「赤と黄色だったらあれじゃない?」


アーサーが指をさしたのはチューリップの束が生けてある花瓶だ。開き始めた大輪にチョコレートが入れてある。オーギーはキョトンと言った。


「アカとキイロって読むんだ・・・?」


その夜、オーギーは母にクイズの改善を要求した。
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