ひとみ
Kiss me, love me, deadly !
ボクは結局、半日近くも空を見上げていた。
端からみたら、少し怖い状況だったかもしれない。
さすがに寒くなって家に戻ることにした。
誰も待っていてくれない家に帰り、軽くへこんでしまう。
でも、仕方ない、今からまたこれがボクの生活になるんだから。
改めて考えてみれば、今年の4月までは、そんな生活だったんだから、なにを今更って感じとも言える。
まぁ、とりあえず、風呂にでも入るかな、体が芯まで冷え切ってしまっている。
温泉とはいかないまでも、入浴剤入れればそれなりに温かくなる。
では、風呂の準備でもするか。
と、浴室に向かおうとすると、携帯電話が鳴り始めた。
ディスプレイには父の携帯番号が表示されている。
離陸直前かな?
今朝、顔も合わせてないし、少ししゃべっておかないと。
「もしもし」
『おお、駿平。もうじき飛行機の時間でな。その前に少し話したくてな』
いつもと変わらない、自信に満ちた父の声が聞こえた。
「あぁ、父さん、ごめん、見送りも出来なくて」
『あっ?そんなことはどうでもいいさ。それより大切な話がある。本来なら電話じゃなくて、直接話したいんだか、しかたないな』
そう言って、父は一度言葉を切った。