ひとみ
なんだか、初めて飲む酒はボクには美味しくなかった。
だけど、体の感覚がふんわりとしてなんとなく気持ちがいい。
いわゆるこれが、酔ったと呼ばれる状態なんだろう。
なるほど、悪くない。
世の中の人間が日頃のストレスから酒に逃げ道を求めるのもわかる気がする。
ひとくちの苦味を我慢すればこんな気分になれるなら、お酒好きになるかも。
「ねぇねぇ、駿平君、君さぁ………」
そんなことを考えていると、ひとみさんが話し掛けてきた。
「なんだか、君って変わってるよね。なんて言うのかなぁ。まぁ、一言で言えば暗い。または、クソがつく真面目。う~ん、君のお父さんとは、ずいぶんキャラちがうわよねぇ~」
あの、その言葉スゴく失礼じゃないですか?
「公平ちゃんて、なんかもっとバイタリティーがあってワイルドなのよねぇ。それなのに君は、そうね、草食動物って感じかなぁ」
「あの、ひとみさん、ボクは父とはちがう人間ですから、違うのは当然じゃないですか。それに、会ったばかりの人間にそんなこと言うの失礼じゃないですか」
酒の勢いを借りたせいか、普段のボクでは言えないようなちょっと強気な言葉が言えた。
そんな、ボクの言葉を聞いて彼女は微笑みを浮かべた。
「でもね、面影や仕草はさすが親子ね。似ているところはあるわ」